街がピンク色に染まる季節。
風も、空も、みんなの顔も。
楽しくて、嬉しくて、そしてほんの少し淋しい季節。
一丁目の角を曲がると、青い屋根の小さな家がある。
玄関には青ポスト。隣には小さな女の子。
「こんにちわ、ゆうびんやさん」
女の子は笑ってそう言う。
肩口に髪を切りそろえ、ピンク色の髪留めをしている。
僕もにっこり笑う。
手紙がないときはそれだけ。
手紙があるときは少し立ち止まって、女の子が封筒を開けるのを見てる。
「おかあさん、おしごとがのびちゃったんだって」
女の子は悲しそうな顔をする。
僕も悲しくなる。
街がピンク色に染まる少し前、その封筒は女の子の元に届く。
女の子は青ポストの隣に立っていて、封筒を受けとる。
『しばらくしたら帰るから』
女の子が笑うと、街がピンク色に染まり始める。
「おかあさんはね、とおいところへおしごとにいってるの。だからあたしはおるすばんしてるの。おとおさんはね、もっともーっととおいところにいってしまったんだって」
「でもね、あたしさびしくないのよ。だって、ゆうびんやさんがてがみをとどけてくれるから」
雨の日も女の子は待ってる。
いつも笑ってる。
ある日。
「ゆうびんやさん! おかあさんがかえってきたの!!」
淡いピンク色のワンピースを着た女の人が、女の子と同じ顔で微笑む。
女の子はすごく嬉しそうで、僕も嬉しくなる。
「いつも詳しい日時は書かないのに、あの子、私が帰ってくるといつも丁度玄関に出てるのよ。ほら、あのポストの脇」
お母さんはそう言って笑う。
青いポスト。
「おかえりなさい、おかあさん!」
女の子の笑顔はいつもそこにあると。
お母さんは知らない。
最初の封筒が届いてから、女の子がずっと待っていること。
晴れの日も、雨の日も、青いポストと一緒に。
ずっと、ずーっと待ち続けていたこと。
お母さんは笑う。
女の子も笑う。
僕は……、やっぱり笑ってる。
街はやがて深緑へと色を変えて、女の子のお母さんは遠いところへ行ってしまう。
街が色を変えてもポストは青いままで、女の子の髪留めはピンク色のまま。
やがてまた来るピンク色の季節を待ってる。
僕は街の郵便屋。
人から人へ手紙を届けるのが僕の仕事。
雨の日も、雪の日も、僕は手紙を届け続ける。
今日もみんなの想いを届けてる。
end.